Businessweekに、Tech Startup Bridges Mideast Divideという記事が載っていた。
Zvi Schreiberという人が社長を務める、イスラエルのGlobal Hosted Operating System (G.ho.st)という会社(バーチャルデスクトップ関連)が、SEとしてパレスチナ人を雇用しており、それがパレスチナのHigh-Tech Economyの創出に一役買うのでは、という記事だ。
パレスチナのアッバス政権は、12月中旬に74億ドルの寄付を集めたばかりだが、世界銀行のレポートによると、パレスチナ経済の発展の近道はイスラエル経済とのインテグレーションだそうだ(言うは易し・・)。
Schreiberは数十人のパレスチナ人を雇用したものの、しばらく彼らに会うことするできなかった。セキュリティ上の理由で、彼がパレスチナ区域に足を踏み入れることはできなかったからだ。逆にパレスチナの従業員もイスラエルに入ることはできない。
ようやく彼らはパレスチナのジェリコ(ヨルダン川西岸にある最も親イスラエル的な街)で会うことができたのだが、お互い「初めて」という感じはなかった。彼らは毎日Skypeを使ったりしてVideo Conferenceをやっていたからだ。
イスラエルとパレスチナの関係が、アメリカとインドのような関係になり、パレスチナ経済が成長すれば、どんなに素晴らしいことかと思う。イスラエルにとっては、国内では一人当たり6万ドル程度の給料を払う必要があるが、パレスチナ人はその30~40%で雇えるというメリットもある。ソフトウェア開発に国境なんて全く関係ない。
パレスチナに関しては、アメリカやノルウェーを始めとする欧州各国が和平構築のため、理念を掲げて取り組んできた。しかし、「理念」は主観や政治的意思を伴う。だから、和平構築のプロセス、あるいはDeclarationはパレスチナ、イスラエル両“国”(注・パレスチナは国際的には“国”ではない)にとって双方が満足する内容には成り得なかった。
しかし、経済(しかもこのケースは草の根である)という双方にとって実利のあるパートナーシップというのは全く新しいアプローチであり、こちらの方がはるかに双方の和平構築に寄与するのではないかと思うのだ。
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梅田望夫の「ウェブ時代をゆく」を読んで以来、自分のキャリアも照らし合わせながら、「新しい職業」についてずっと考えている。
しかし、この記事を読んで、インターネットが創出する「新しい職業」は個々人のキャリアだけでなく、一国の経済を立て直し、積年の対立関係すらも解決に導くパワーがあるのでは、と思った。
常に自戒を込めて考えているのは、「インターネットは世界を変える力がある」なんてこの業界にいる人間の妄想だ、ということ。正に自分がイノベーションの旗手だと言わんばかりにネット、ネットと叫んでいる人に対しては、浮かれるなよ、調子に乗るなよ、といつも言いたくなる。
しかしこういったケースを目にすると、やっぱり期待していいんだな、と思う。今まで世界中の英知を集めても超えられなかった垣根、壁をインターネットの力で越えて、世界が平和になれば、身捨てたもんじゃないなって皆思ってくれる。
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