Google版Wikipedia、knolのテストが開始された(詳細ITメディア記事参照)。
このサービスは、Webの歴史における「大転換(big switch)」になるだろう。
従来のインターネット・Webは、利便性を重視し、「オープンであること」を大前提に据え、急拡大してきた。
我々は自分が何者かを明かさないまま、特定のサイトに偽名を使ってユーザ登録することができるし、または意見を書き込むこと、あるいはそれに対して反論をすることも匿名のまますることが可能である。Web2.0でもてはやされているCGMもこのような匿名性が担保された上で、成り立ち、あるいは発展してきたと言って間違いない(YouTubeも、匿名のまま違法コンテンツを投稿 / 視聴できることによって成功した)。匿名性が担保されたWebの世界において、全世界に数億人いるProsumerはWeb上にいとも簡単にコンテンツを投げ入れ、インターネットの利用者は、極めて多様で拡張性を備えた、利便性の高い膨大なコンテンツにフリーでアクセスすることが可能となっている。
しかしその一方、Webの世界は、一部の機能を欠落させてまま発展してきてしまった。
「信頼性」である。
CGMの発展と反比例する形で、コンテンツに対する「信頼性」は何の保証もないために著しく損なわれ、ある種の「胡散臭さ」を備えたまま発展してきてしまった。
一部の理解のない人たちには、2chやWinny(どちらも革新的なサービス・技術だ)のようなサイトの負の部分だけを抜き出し、「ネット=悪」というイメージが確立してしまっている。
それが、このknolによって大転換を起こすかもしれない。
Googleというネット界の主がこの手のサービスを開始したことにより、「署名式」という方式はスパンの長短は別にして、一定規模のStreamを形成するはずだ。結果、Web上のコンテンツは信頼性のあるもの / ないものに別れ、淘汰されていくだろう。あくまでキーは「信頼性」であるから、記名方式以外に信頼性を担保するようなサービス・手法もどんどん生まれていくだろう。
さらにknolにおいては、コンテンツの投稿者は、広告を表示するかどうかの選択が可能であり、もし広告掲載を許可した場合、そこから得られる「かなりの部分」の収入を得られる仕組みになっている。これにより良質のコンテンツを投稿した人が収入を得ることが可能にあり、一部の専門家は新たな収益を手にするだろう。結果的に本当に意味でのProsumerが生まれる土壌が整うことになる。
現状、Wikipediaの評価は2分している。マイナス評価のポイントは「度が過ぎるオープン性」、「無記名式」にある。これを克服し、knolは数年後にWeb史を振り返った時に、新たなWebの潮流を作ったBig Switchとして振り返られるはずだ。